刑務所あがりの人に声かけたいゲイ

刑務所から出てきた、行くところも仕事も見通し立ってなさそうな孤独な男（身長170台、体重80台、年齢20～50代）に声かけて、しばらく家に泊めてあげたいわ
お仕事のお世話もしてあげるの。
小さい頃から愛情や優しさに触れずに育ってきたから、可哀想なことにその男は愛や優しさってもんがどんなものなのか分からないの。
だから、冷たい世間から追い詰められてついに人を傷つけてしまい、刑務所行きになってしまった悲しい過去を持ってるのよね…
刑務所あがりってことで、行政の就労支援はあるもののそんなに上手くはいかなそうで、また人を傷つけて豚箱に入らなきゃいけねえのかな…なんて思いながら、誰も出所を待っててくれない刑務所出口を俯いて歩いていると、乗ろうとしていたバスの乗り場であたしと出会うの。
バスを待ちながら、無言で並ぶあたしとその男。
あたしがふと気になって、男に声を掛けるの。
「寒くないですか…？」
今は1月中旬。雪もチラついてる。
男は、薄手の長袖シャツにスエットズボンのみ。
あたしに言われて、その男は「寒い」ってやっと思い出すの。
（「寒さを感じない」ってのは、男が人間らしさを失っていることのメタファーね）
寒がりだしたその男に、あたしは着ていたコートとマフラーを渡すの。
そんな親切、人生で初めてだったその男は、あたしの顔をボーッと見つめる。
その瞬間、2人はそれぞれ、何か特別なものを感じるの。
それから、バス停でたわいのない話や、彼の刑務所行きになった経緯の身の上話、人生の展望ゼロ、行く場所もないみたいな話をして、あたしは「行くところがなければ、うちに来ますか？」って勇気を出して言うの。
それから、2人の奇妙な同居生活が始まるの。
同居生活3日目で、あたしがゲイだと彼に悟られるんだけど、プラトニックな関係でいることを約束して、彼との同居は継続。
でも、生活を共にしていくうちに、彼の中でも、あたしに対する特別な感情は大きくなっていくの。
今まで愛や優しさを知らなかった男に、無尽蔵に与えていくあたし。
ある夜、スヤスヤ眠るあたしの顔を見て、湧き上がるものを抑えきれなかった男は、思わずあたしの唇にキスをするの…

長すぎよ